弥生尽

旧暦の三月の晦日のこと。ひと月の終わりということじゃなく、「春」の終わりの日というニュアンスのようです。春はいい季節、秋もいい季節ですよね。夏はちょっと暑くて大変、冬は厳しい。なので春と秋は終わることを惜しまれる季節なんだそうです。弥生は三月のことなので「三月尽」と言ったりもしますし、新暦的に当てはめた感覚で「四月尽」と使う例もあります。本来はいい季節「春」の終わりを惜しむという「弥生尽」ですから、新暦の意味で三月尽と使うのをいかがなものかという説もありますし、昔の句の場合は旧暦で作られているものがほとんどで「弥生尽」とは別の意味合いが強いようです。
同じいい季節の最後を惜しむという意味でいくと、秋を惜しむ「九月尽」という季語もあるが、こちらは新暦、旧暦入り乱れて作句されている感があり、解釈に苦しむ句も多いようです。近年三月と九月以外だと、二月が他の月より短いということもあり「二月尽」として使われる例は少し見られるようです。
「尽」という文字をある月の下にいたずらにくっつけて俳句を作るのは避け、三月尽と九月尽、春と秋の終わりを惜しむという気持ちを込めて詠んでみたいものである。

《日の影の池の底まで弥生尽/川上梨屋》

《四月尽兄妹門にあそびけり/安住敦》